アメリカ出身のジェーンと、日本出身の私、ミオ。私たちは、日本で穏やかに、そして互いを支え合いながら暮らしてきました。日本は同性婚こそ認められていませんが、治安が良く、周囲の偏見も少ないため、私たちにとって安心できる場所そのものでした。
ただ、一つだけ心に深く沈んでいた「諦め」がありました。それは、子供を持つことです。
偶然から始まった希望
日本で同性カップルが子供を授かるのは、想像以上に高いハードルがあります。海外の精子バンクからの輸入、親族や友人への依頼……。どれも心理的な抵抗や手続きの壁があり、私たちはいつしか「二人だけの人生も悪くないよね」と、自分たちの本音に蓋をするようになっていました。
あるおき、ジェーンが「Sazucari(サズカリ)」という精子提供のホームページを見つけてきたのです。法整備が追いついていない日本への不安はありましたが、詳しく調べていくうちに、これが私たちにとって「唯一のチャンス」かもしれないと感じ、思い切ってカウンセリングを申し込むことに。
心の壁の崩壊
面談の当日。いつもはおしゃべりで陽気なジェーンが、珍しく口を閉ざしていました。「どうしたの?」と聞くと、彼女は不安そうに「ドナーの人はきっと英語がわからないから、ミオが全部話して」と。
その会話が聞こえたのでしょう。ドナーの方が笑顔で、流暢な英語でジェーンに話しかけてくれたのです。
「驚かせてすみません。英語でのコミュニケーションも大丈夫ですよ。」
ジェーンは目を見開き、そのあと「ワオ!」と声を上げて大笑い。一気に場の空気が和らぎ、そこからは冗談を交えながら、私たちの家族への想いや精子提供に対する考え方を共有することができました。30分後には、迷いなく「この方にお願いしたい」と決意していました。
あらたな家族の展開
数回目の提供を経て、ついに新しい命が宿りました。先日無事に出産し、腕の中に温かな重みを感じたとき、これまでの葛藤がすべてこの瞬間のためにあったのだと涙が溢れました。アメリカから駆けつけてくれたジェーンの家族も、新しい家族の誕生を心から喜んでくれました。
しかし、話はここで終わりません。 「自分は産む気がない」と言っていたジェーンが、私の出産後、真剣な眼差しでこう言ったのです。
「ミオの子供なら、私は心から愛せる。でも、もし同じドナーから提供を受けて私も産むことができたら……二人の子供が本当の意味でつながった兄弟になれる。もっともっと、賑やかで楽しい家族になれると思わない?」
現在、ジェーンも同じドナーの方から精子提供を受けています。愛する人の子供を、次は私が抱く。そんな未来を想像するだけで、毎日わくわくが止まりません。
葛藤している方へ
「自分たちには無理だ」と諦めていませんか? 制度や形式に縛られて、自分の気持ちを捨てないでください。精子提供という選択は、単なる手段ではなく、私たちのようなカップルに「家族になる勇気」を与えてくれました。

